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探偵見習いと化け猫」各章・・・・。 」

 

第七章

第七章(一月一日は、この章から。

 シロは、天猫の頼みを聞いたはずなのに出掛けることはしない。頼み事を忘れていのか、主の膝の上に乗ったまま何ども、何ども頭を膝に擦り付けていた。主の膝の上が暖かいのか、それとも安らぎを感じるのだろうか、ごろごろと気持ちいい鳴き声を上げていた。

 そして、何分だろうか、いや、何十分だろうか経った時、主の顔を見て鳴き声を上げた。

「主様、又、出かける用事が出来ました。直ぐに帰ってきますからね」

 シロは何度も、何度も振り返りながら引き戸の所まで行った。

「待っていて下さいね。私が必ず治してあげますからね」

 天猫がしたように右手で器用に引き戸を開け、体を擦りながら引き戸を閉めた。

「お婆ちゃん。もう寝てしまったかしらね。起きていればいいけど」

 そうつぶやきながら隣の家に向かった。そう思うのも分かるように思えた。時計を見る事が出来て、もし、時計の意味が分かれば夜七時になっていた。天猫が探偵事務所から出掛けて二時間が経っていた。

「お婆ちゃん、起きて。おばあちゃん、話があるの、開けて」

 シロは隣の家の裏に周り。ガラスの引き戸の所で丸くなって寝ている猫を見つけると、ガラスを引っ掻きながら何度も頼んだ。

「ふぁあ、あらシロちゃん。如何したの」

 老猫は大きく背伸びをすると起き上がった。そして、家人の女性の主に鳴き声を上げた。

「あらあら、シロちゃんね。遊びに来たの。はいはい、今開けてあげるわよ」

 そう言いながら扉を開けてあげると、二匹は縁側に寝そべった。家人は面白いテレビでも観ていたのだろう。また、テレビの前に戻って行った。

「また、お願いを聞いて欲しくて、又きました」

「なぁに?」

「話って主様の事なの」

「そう、私に出来る事ならいいわよ。なぁに?」

「又、探して欲しいの。今度はね。マタタビのような感じになる物が場所を探して欲しいの。それが分かると、前に話した。神様に会えるかもしれないの」

「いいわよ。私はシロちゃんのファン一号だからね。なら二号、三号にお願いしましょう」

「ありがとう」

「シロちゃん。主様が心配でしょう。家で待っていなさい。クロの二号を向かわせるわ」

「うん、うん。ありがとう。待っています」

 何度も、何度も頭を下げながら老猫の所か去り、家に帰って行った。

 そして、家に帰り。引き戸を開けて入り、閉めようとした時に黒猫が現れた。その猫はシロの集会のような集まりをしていた時の指示をしていた猫だった。

「シロさま、話しは全て聞きました。私に任せてください。必ず見付けます」

「何度も御免なさいね」

「謝らないで下さい。私は、シロ様の喜ぶ事なら何でもしたいのです。それが、私の、いや、皆の願いなのですよ。」

「ありがとう」

「シロ様は家で待っていて下さい。私が必ず知らせにきます」

 シロのうなずきを確認すると、即座に走り足した。シロは、その力強く鬼気とした走りを見て、一瞬だが、顔の表情を変えた。それと同時にゴロゴロと喉を鳴らしている。興奮しているのだろう。そして、又、主の膝の上に戻った。

「主様。知らせがくれば治りますよ。また、一緒に遊んでくださいね」

 そう、つぶやきながら先ほどと同じ表情を浮かべた。主は声も表情も変えないが、シロは気にしていない。目を閉じて病気の前に遊んでくれた事を思い浮かべているのだろうか、それとも、治った後に遊んでくれる様子を夢で見ているのだろう。また、ゴロゴロと喉を鳴らしながら表情を変えた。主に喉を撫でられたのか、それとも、一番好きな良い子、良い子と言われながら頭を撫でられたのだろうか、猫の表情は判りづらいが、やはり先ほどの表情は笑みと思えた。このような様子では黒猫が来ても目を覚まさないだろう。

その頃の黒猫は、シロファンクラブの会員番号順に家や空き地と猫を探し回っていた。何故か頼りになる猫となると見つからない。それでも探し回り何件目だろうか、伝説の天猫が現れて猫を公園に集めていると耳にした。

「ありがとう。俺は公園に行ってみる。本当なのか確かめなくては話しにならないだろう。会員番号三十九番。シロ様の頼みごとを残りの皆に伝えて欲しい」

「分かりました。任せて下さい」

 黒猫は半信半疑で公園に向かうが、途中で探していた猫と会った。

「おう、会員番号三番探していたぞ。シロさまの願いを伝えに来た」

「そんな状態では無い。猫族の危機なのだ」

「まさか、本当の天猫なのか」

「間違いない。その天猫なのだが、何故か、シロ様と同じような頼み事を言われたよ」

「えっ」

「マタタビが無くても、同じような気分になる物か、場所を探してくれ。そう言われた」

「えっ。シロ様と同じ頼み事だ。何故、同じなのだろうか?」

「同じなのか、今回は天猫の頼みを優先しなくてはならない。その理由は分かるだろう」

「伝説が本当なら食料を食べつくし、それだけでなく、メス猫に誘惑の呪いでも」

「全てを言うな、口にしたら本当に起こっては困る」

「そうだな、済まなかった。だが、俺は、シロ様を優先させる。真っ先に知らせるぞ」

「仕方ないだろう。気にするな。もういいな、時間が惜しいから探しに行くぞ」

「済まなかった」

「ああ、そうだ。まだ、公園に居るはずだ。会ってみたらどうだ」

「そうだな、会ってみるよ」

「驚くぞ。一緒に行って驚く顔を見たいが、早く捜索しなくてはならないからな。残念だ」

「えっ、そうなのか?」

「ああ、又な」

 会員番号三番と言われた猫は、親の死に目に間に合ってくれ。それと同じような真剣な様子で駆け出した。長老の一言で、ここまで変わったのだ。若い頃の長老は、それほど凄い猫だったのだろう。黒猫も、余ほどの事だ。そう感じたのだろう。尻尾を垂らし、恐怖を感じながら公園に入ろうとしていた。

「あああ、あの時は、どうも。シロの話しを聞かせてくれて助かったよ」

 天猫が、黒猫に話しをかけた。

 シロを呼びすてにされて一瞬、顔を顰めた。

「あああ、あの時の。シロ様の気持ちを変えさせた。あのバカ猫」

「えっ、バカ?」

「あああ、何でもないです。私事です。気にしないで下さい」

「そうか、それで、呼び出しの鳴き声で来たのか」

「呼び出し?」

「違うのか」

「ああ、そう、そうです。伝説の天猫様が、いらっしゃっていると聞きまして」

「伝説のか知らないが、俺が天猫だ」

「えっええ、天猫様なのですか」

「そうだ」

「私は、シロ様の願いで、天猫様と同じ物を探しますが、シロ様にしか渡しません。それを、言いに来ました。それで、構いませんよね」

 黒猫は視線で殺せるような鋭い視線を送った。恐らく、死ぬ気で話しをしたのだろう。

「ああ、いいぞ。頼む」

「えっ」

「驚いているようだな。シロには、私から頼んだのだ」

「そうでしたか、私は、これから、探しに行きます」

「おお、頼むぞ」

 そう伝えた。公園から出る時の後ろ姿を見ると、心底からガッカリしているように感じられた。それも、そのはずだろう。シロの為なら何でも出来るが、頼み事は天猫なのだ。

「天猫殿。知らせが来たら、お知らせしますぞ。見つかった後は行動しなければならないはず。帰られて休まれた方が良いと思いますぞ」

「言う通りだな。休ませてもらうよ。それで、連絡先だが、山田 省吾、探偵事務所に住んでいる。その家まで知らせに来てくれ。分かるか?」

「ああ、分かります。最近に主が亡くなり。息子が後を継いだはず」

「そうそう、その家だ。知り合いだったのか」

「その主に、ちょくちょくご飯を貰いましてね。よく憶えています」

「そうだったのか」

「はい、お知らせしますので、ゆっくりお休みください」

 この場に居ては邪魔と思うような慇懃無礼な態度で勧めた。

「そうするよ」

 天猫は、今頃思い出したのか、やれることは全て終わり安心したのだろう。疲れたからでなく空腹を感じて家に帰る気持ちになった。頭を軽く下げるとフラフラしながら歩きだした。余ほど空腹を感じているのだろう。

「やれやれ、やっと帰ってくれたか。はっあー立っているのは腰にくるなぁ。やっと休める。まあ、寝る訳には行かないが休まなくては体がもたない」

 老猫のだからか目が悪いのか、見送るのが正確的に嫌いなのか、視線を向ける事はしなかったのだが、公園から出たのを耳で感じ取ったのだろう。直ぐ寝そべり寛いだ。

そして、天猫は、探偵事務所に帰り、ゆっくり明日の朝まで寝られるのだが、朝、驚きの叫び声で強制的に起こられるのは分かるはずがなかった。

「ウギャルニャギャ」

 何百の猫が同時に同じ叫び声を上げた。それはまるで、発情期の声と恐怖の驚きの叫び声を合わせたような鳴き声だった。その声で天猫は飛び起きた。まあ、近所の人間も何事が起きたのかと目を覚ましたはずだ。そして、全ての家に住む人や動物はうるさいと叫び声を上げた。その気持ちも分かる気がする。まだ、朝と言うよりも夜明けだ。朝日がようやく昇って間もない時間だった。だが、外の様子を見ると口を閉ざし、これは夢だ。そう思いながら怯えるように寝ようと努めた。

「何故、このような数で知らせに来るのだ」

 天猫だけが理由を知っているからだろう。窓の外を見続けた。まあ、その数は日本中の猫が集まっている。そう思うほどの猫が集まり、何度も何度も叫び声を上げていた。

「知らせてくれてありがたいが、もう叫ぶのは止めろ」

 頭痛がするような不快を感じる起こし方をされ、天猫は怒り声を上げた。

「おおお、天猫様。指示された物と思える物。いや場所を探す事が出来ました」

「済まなかった。後はゆっくり休んでくれ」

「天猫さま、私達はお供を致します」

「いや、気にしなくて良いぞ」

「猫族の一大事と聞きました。お供させて下さい」

 全ての猫が深々と頭を下げた。だが、何だか興奮しているような声色だった。天猫は気が付いていないが、この場の猫はマタタビと同じような気分になれる。それを知っている猫と一緒に行き、その場所を知りたかったのだ。恐らく、楽園と考えているのだろう。

「これ程の数で行動が出来るはずが無いだろう。直ぐ帰れ」

 天猫の殺気に怯え。一匹、二匹、と次々に帰って行った。だが、野良ボス格の猫だけは帰ろうとしなかった。マタタビなどよりも用件が終われば、この地から消えてくる。消えてくれれば何も災いが起きない。それを確認したいのだろう。

「天。まさか、もう見付けたのか?」

 鏡が驚きの声を上げた。

「うん、見付けたみたい」

 天猫も驚いていた。まあ直ぐ見つかるのは当たり前だろう。先にシロが大勢の猫達で探せる所は探した後だし、マタタビの関係なら誰かが知っているはずだ。それを説得するだけの時間が必要だったはずだからだ。

「鏡お兄ちゃん。場所を教えてもらってくるよ」

「そうだな。それがいいだろう」

 天猫は窓から外に出た。畏まっている猫の前に現れると、

「お待ちしていました。それでは、お連れします」

 長老が言葉を掛けてきた。

「案内して欲しいが、まさか、ぞろぞろと大名行列のように移動するのか」

「それは、ありません。今集まっている猫が、邪魔されないように散ります」

「ほう」

「マタタビと同じような物です。例の場所に猫が常に集まっていられては困るはず。それを、防ぐためにボス猫を残させたのです」

「そこまで考えていなかった。済まない」

「ご案内を致します」

 長老が声を上げると、全ての猫が忍者のように方々に散った。それが、合図のように長老が歩き出し、その後を天猫が歩き出した。

「はっあー」

 天猫は大きな溜め息を吐いた。長老は、それに気が付かずに歩いている。確りした歩き方なのだが時々足を止めて、ボス猫たちが見張りをしているか、それを確かめている。そう、長老は装っているが、天猫だけでなく見た者は腰が痛くて休んでいるとしか思えなかった。また、天猫は溜め息を吐いた。何度目だか思い出せないほどの回数だ。

(これでは、いつ着くか分からんぞ。案内を誰かに代わってもらうか)

「天猫様、如何したのです?」

 殺気でも感じたのだろか、突然に振り返った。

「えっ。ああ、何でも無い」

「そうですか、それでは、案内を続けます」

 二人は立ち止まると、溜め息を吐く。と、何度も同じように繰り返し道を進んだ。そして、近郊の大きい百貨店の駐車場に案内された。この建物と駐車場は最近に建てられた物で、その前は工場で、その前は神社だった。名残が駐車場の隅にあったが、長い年月で何の像か分からなくなっていた。それでも、今まで残されたのは、何か分からない像だった為に壊すことも移動させる事も出来なかったからだ。祟られるのを恐れたからだろう。

「これか」

 天猫は興味を感じて近寄ろうとした。

「そうです。ああ、でも近寄らない方が良いですぞ」

 それ見て、長老は引き止めた。

「そうだな。今、酔ったら大変だからな」

 うんうんと、首を上下に動かしながら納得した。

「この像、いや、この場所で良かったのでしょうか?」

「ああ、間違い無いだろう。まあ、主に聞いてみる」

「それでは、我々は、全ての用件が終わったと考えて良いのですか?」

「ああ、そうだ。済まなかったな、ありがとう」

 長老は、天猫を一人残して歩き出すと、周りで複数の猫がいるような音が聞こえた。恐らく、邪魔されないように見張っていた猫が去ろうとしたのだろう。

「さあ、帰るか。鏡お兄ちゃんに知らせなければない」

 近寄らないが、その像の隅々を記憶した後に、事務所に向かった。

「ああ、もう、沙耶加さんは来ている頃だな」

 そう、独り言をつぶやくと歩き出した。

「一人なら、いや、子猫の案内でも半分の時間もあれば着くぞ」

 一歩、歩くごとに愚痴をつぶやきながら歩き続けた。そして、考えられるだけの愚痴を言い終わる頃、探偵事務所に着いていた。

「あらあら、やっと帰ってきたのね。お帰り」

 ニャと、窓枠の上から声を上げた。ただいま、お腹が空いた。そう鳴き声を上げたのではないが、沙耶加には、そう、聞こえたのだろう。だが、違っていた。

「鏡兄ちゃん。見てきたよ。ああ、駄目か、話し出来ないか」

 天猫は仕方なく、遅い朝食を食べる事にした。

     「探偵見習いと化け猫」各章・・・・。 」