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探偵見習いと化け猫」各章・・・・・・・・・・。 」

第終章

第十七章

「天、如何した。元気が無いぞ。ほら、行くぞ」

「天ちゃん。大丈夫なの?」

「静お姉ちゃんも鏡お兄ちゃんも、天は大丈夫だから心配しないでよ」

「そうかあ、なら行くぞ」

 鏡、静、天猫が都市から出たのを確認すると、輝は、都市から船に指示を与え、船の全ての扉を開放させた。

「おおお、開けてくれたか、ありがたい。静、何処から入る?」

「輝さんが、扉を開けてくれたのですから、見学気分で正面から入りましょう」

「そうだな」

 通路に入ると、驚きの余り言葉を無くした。それ程の絵が通路の両脇だけでなく上下にも描かれていた。船や都市が製造される以前の歴史だろう。鏡と静には意味が分からなくても、心からの興奮を感じる程の
物だった。そして、一つずつの部屋を開ける度に、室内の調度品を見て驚くのだった。誰が見ても、この船に乗っていた人々は高貴な人の船だと感じるはずだ。

「うぁああ、綺麗ね。凄いわ。王族の持ち物って、この様な作りよ。多分だけどね」

 静の考えは当たっていた。都市から出て暮すと考えた人々は、一族を支配する王族だった。船や調度品を見なくても予想は出来るはずだろう。都市から出ると考えた人々の護衛に竜を付け、船まであるのだか
らだ。普通の人々なら身一つのはずだろう。

「確かに、無駄に金をかけている。それは分かるなぁ」

 鏡は、驚きはしたが興味が無かった。だが、綺麗な瓶でなくて樽型の酒だったならば興味を感じて飲み干しただろう。そして、静も調度品などを見慣れてきた頃、いや、感覚が麻痺する程の時間が過ぎた時だ。

都市から輝の悲鳴が響いた。

「お願い、出来る限り早く帰ってきて」

 輝は、機械操作に夢中で、自分でも気が付いていないが、心の思いを呟いていた。その悲鳴の理由は、都市の原点の数値が安定してない為だった。このまま数値が下がれば、都市の移動が出来なくなる可能性があったからだ。その理由を考えながら機械操作を続けていた。都市の外を見る余裕があれば、そして、竜の姿を見れば想像が出来たはずだ。まるで、蛹のように固まり始め、だんだんと、生物と言うよりも石の彫刻のような状態になっていたからだ。恐らく、都市の機能は、いや、時の流れの意思は、原点は、生物なら生きてきた分の数値を判断が出来るのだろうが、石になってしまったら、新規の原点となるのだろう。その為に、都市と竜の数値が下げ始めていた。

「静、天、聞えただろう。急がなければならないなぁ」

「もっと、いろいろ見たいけど仕方がないわね。主様と言う人を探しましょうか」

「天、大人しいが本当に大丈夫なのか?」

「鏡お兄ちゃん大丈夫だって、主様と言う人の気を探していただけだよ。感じ取れたから後に付いてきて、でもね。何か興奮しているから気をつけてね」

「だろうな。何も思い通りに行かず、まして、一番信頼していた部下が裏切ったと思っているはずだからなぁ」

「なら、行くよ」

 天猫の後を、静と鏡がついて行った。

「動け、我は仇を討つのだ。動いてくれ、動け、動け」

 主様と言われた者は、操舵室に居た。天猫が言ったように興奮を現し、船を動かすのに全神経を使っているようだ。天猫達が、操舵室に現れたと言うのに気が付いてないのだ。

「うぁああ」

 静は、操舵室の中を見ると驚きの声を上げてしまった。ただ一人いる者。主様と言われた者の狂った様子を見たので無く、室内が金を掛けられるだけ掛けた室内だった。一つだけ例を挙げるとしたら、一番豪華を挙げてみる。それは、船を操舵する物だ。ただのハンドルでも、レバーでも良いはずなのだが、ただの丸ハンドルでは無く、純金で真ん中には、一族の花押なのだろう。この世にある宝石を惜しみなく使って、トラ猫とマタタビの木が描かれていた。目がサファイア、毛は金で一本一本を細部まで小まめに現していた。

「誰だあぁ」

 静の声を聞き振り向いた。

「もうあきらめろ。迎いに来たぞ。一緒に来い」

「ふざけるな、我は、船と共に空間を出るのだ。邪魔をするな」

 全てを話し終える前に、鏡と静に向かって銃弾を放った。鏡は、男に目線を向けていた為に危険を感じて逃げる事は出来たが、静は、室内の豪華な調度品に心を奪われ気が付かなかった。それを感じて天猫が、静を助ける為に身体をぶつけた。

「天ちゃん。何をするのよ。えぇ、大丈夫?」

 銃弾は静には当たらなかった。だが、その銃弾は天猫の腹に当たってしまった。

「天、大丈夫か?」

「天ちゃん。天ちゃん」

 静は、我を忘れたように泣き止まなく。鏡が容体を確かめた。だが、直ぐに主様と言われた男に鋭い視線を向けた。

「助けに来てやったと言うのに、何を考えているのだ」

 即、駆け出し、男の腹に蹴りを入れた。

「げっほ」

 男は、その場に崩れて折れた。

「静お姉ちゃん。泣かないで。鏡お兄ちゃんも怒りを抑えて」

「殺して無い。竜の頼みでもあるし、輝と同じ一族でもある。一番の気持ちは、あの馬鹿を殺す価値が無い。天、安心しろ。怒りは無い。それより大丈夫なのか?」

「天の話を聞いて」

 死ぬほどの怪我では無い。と胸を撫で下ろした。そして、天の話を聞きながら、男の元に向かった。

「天は、この怪我でなくても、寿命で死ぬのは分かっていたよ。でも、都市まで連れてって欲しい。少しでも父さんの近くに居たいから連れてってお願い」

「天、話すのは止めて、都市に行けば、輝さんが治してくれるわ。確りしてよ」

 その話を聞きながら静は都市に連れて行けば治る。そう思って移動テーブルの上に載せようとしていた。そして、鏡は、静に天猫を任せ、気絶した男を乱暴に移動テーブルの上に乗せると、船を後にした。

「早く来て、時間が無いの。早く出ないと空間から出られなくなるわ」

 輝は、鏡たちが、何時、船から出て来るかと待ち続けていた。そして、姿を見ると、悲鳴のような言葉を上げた。その悲鳴が聞えたからで無いだろう。恐らく、耳に悲鳴は届いて無いはずだ。ただ、天猫を助けたくて、急いで都市に向かっているようだ。

「輝さん。お願い天ちゃんを助けて」

 都市に入ると、直ぐに大声を上げて助けを求めた。

「てって天猫さん。撃たれたの」

 都市の監視映像機から、天猫の腹から血が流れ出ているのが見え、輝は悲鳴を上げた。

「天ちゃんを助けて、何処に居るの。何処に行けば良いの?」

 姿は見え無いが、声が聞こえ周りを振り向いて探した。

「今から行くわ。その場で待っていて」

 普段から居る。監視室か、休憩室のような部屋から直ぐに現れ、天猫の容体を診た。

「ねね、天ちゃんは大丈夫よね」

「直ぐに診察室に連れて行くわ」

「俺の事は気にするな。この空間から出ないと不味いのだろう」

 天猫は痛みで気絶していたのだが、声を上げた。だが、まるで別人のような老人のような声で、皆は、傷の容体よりも驚きを感じた。

「え」

「天?」

「天猫さん。話をしないで傷に響くわ」

「天猫には違いないが、別人かもしれない。俺は、老衰で間も無く死ぬ。それで、なのだろう。全ての未来を感じ取った。時の流れも生きている。一つの流れでは無いのだ。まして、この空間は時の流れから外れているから、時の流れに戻れば、時の自動修復が働くだろう。大人の猫と子猫が同じ猫なら、そして、同じ時の流れに現れれば、修正がやり易い子猫のほうに流れが変わり片方が消えるだろう。子供なら記憶や生きて来た時の流れが短いからなぁ。それは、他の者にも言えるぞ。今までの記憶が消え、新しい時の流れで生きる事になるはずだ」

 天猫が呟いた。死期が近いからだろう。時の流れの意思を感じたのだろうか、それとも、死とは、全ての事柄が分かるのだろう。そう判断が出来る事を話し出したのだ。

「でも」

「俺の事は気にするな。だが、願いがある。空間から出る時、俺が亡くなっていたら亡骸はだけは、一緒に連れて行ってくれ。同じ時の流れに戻れるかもしれない。出来たら、又、一緒に旅が出来るのを楽しみしているよ」

 皆は、急ぎ空間から出る為に行動していた。天猫の命を助ける為、それもあるが、都市の原点の数値が下がる時間が早くなってきた。その二点の為だ。

「駄目だわ。この数値では都市の移動は出来ない」

「出られないのか?」

 代表のように鏡が問い掛けた。

「安心して、獣人と天猫さん達だけは、空間だけでも開いて出られるようにするわ」

「輝さん。ありがとう」

「えっ、ちょっと待ってよ。輝さんを、一人だけ置いて行くの?」

「私の事は気にしないで、都市から出ても、どうして生きて行けば良いか分からないわ」

「でも、都市では生きられないのでしょう?」

「生きて行けるわ。ただ、好きなように行動が出来ないだけ、だから、気にしないで空間から出て、今、先に獣人を空間から出しているわ。その後に直ぐにでも行ってね」

「鏡、信じられない。本当に輝さんを一人置いて、この都市から出るの」

 鏡は、何も返事をしなかった。天猫の状態が気になっているのか、だが、静の話を聞き終わると、一瞬だが、笑みを浮かべた。その笑みの理由は分からないが、静は、話を止めた。何か考えがある。そう思ったのか、天猫の身体に影響がある。そう考えたのだろう。

「輝さん。何か操作する事でもあるのですか、何も無いのでしたら身体を休めて下さい。一人だけ残すにしても、元気だと分かるなら安心して出て行けます。それとも、今から難しい操作でもあるのですか?」

「もう、何もする事は無いわ。そう言われるなら少し横になるわね。でも、出る時は起こしてね。お見送りしたいから起こしてよ。絶対よ。起こしてね」

「大丈夫ですよ。安心して下さい。忘れたりはしませんからね」

 鏡は、笑みを浮かべながら返事を返した。だが、悪魔が何かを企んでいるような笑みだった。そして、時間が過ぎ、獣人が全て都市から出ると、静は、鏡に視線を向けた。本当に輝さんを一人残すの。と言うような視線を向けた。それに気が付か無いのだろうか、天猫を大事そうに移動テーブルに載せていた。

「天ちゃんは、大丈夫?」

「生きているようだ。だが、表情が無いと本当に年寄りと感じるなぁ。老衰は本当なのだろう。確かに、千年は生きている計算だからなぁ」

「そうねぇ」

「静。頼みがある」

「何なの?」

「主様。だと言うあの者を背負いながら天を連れて出られるか?」

「寝ていたら起こすのは、静は嫌だろう」

「まさか」

「俺も女性を起こすのは嫌だ。静のように寝起きを見たのとか、何かしただろう。とか言われるのが怖い。寝ていたら抱えてくるよ。後の理由は静に任せるぞ」

「その為に寝かせたのね」

「そこまで考えていないよ。疲れが顔に表れていただろう。それでだよ」

「なら、私が輝さんを抱えてくるわよ」

「いいが、もし、起きたら無理にでも連れて来られるのか?」

「天ちゃん。行くわよ。扉を出たら、どのような所なのかしらねぇ」

 静は、鏡の話を無視して、この都市に入ってきた部屋へ、扉に向かった。笑みを浮かべているが、その笑みは、行き先の思いでも、天猫の容体でも無いだろう。目覚めて、輝に怒られる事になるだろう。その全ての理由は、鏡に押し付ける。その事を思い出しての笑みだと思えた。そして、扉を潜った。その時、気持ちでは戦いになるかもしれないと判断した。先に獣人が出たのだ。仲間の仕返しを考える者や何かの諍いが起きるかもしれない。そう考えたからだ。

「えっ、ここって最後の戦いに入った場所ね。昔に戻ったの?」

 背中に背負っている男を無造作に下ろし。周りを見渡した。後ろを向くと扉は無く、洞窟があった。

「おお同じ場所だなぁ。又、旅が出来るなぁ」

「何をにやけているのよ。嫌らしいわね。何時まで抱えているのよ」

「あああ、この場所に戻って来た。喜びでなぁ。それに、輝さんは軽いし、忘れていたよ」

「私が、重いと言いたいのかしら」

「お、誰か、来るぞ」

「ええ、あれって、私なの、子供の天ちゃんも居るわ」

「そうだなぁ」

「あっ」

「なんだぁ」

 鏡と静は、四人の男女と子猫を見ると、立ちくらみを感じた。そして、その場に倒れてしまった。そして、歩いて来る鏡と静も、二人の男女も子猫も驚きの声を上げた。

「これって、俺か?」

「私なの?」

「あっ、輝さんと瓜二つの女性ですね」

 主様と、言われた同じ男性の空が声を上げた。

「空さんと同じような人も居るわね」

「大きい猫だぁ。天も、この猫のように強い猫になりたいなぁ」

 四人の男女と子猫が声を上げると、その場に倒れてしまった。それと同時に、この地に現れた。大人の天猫から始まって、鏡、静、輝、主様と言われていた空が突然消えた。全ての者が消えると、四人の男女と子猫が起きだした。

「なんで、この場所で寝ているの?」

 先に静が起きた。そして、鏡を起こした。

「鏡、大丈夫」

「大丈夫だ」

 鏡は頭を振って記憶を思い出そうとしていた。だが、皆も同じように起きたが、同じ人が居た事を思い出す者は、誰も居なかった。その事より、気を失っていた為に、そして、特に目立つ物が無い為に、北から来たのか、南から来た事も分からず。行き先を決める為に話を始めた。

「輝さん。空さん。赤い糸は、どの方向に向いていますか、私達には見えませんので教えて下さい」

 鏡が、二人に話を掛けた。

「北ね」

「東だ」

 輝と空は、同時に声を上げた。だが、それは、二人とも嘘を言っていた。

「ああ、済まない。北だった」

 空が訂正した。

「間違いです。東です」

 また、二人は同時に答えた。そして、二人は顔を見合わせ。照れたように笑みを浮かべた。それは、まるで、恋人のような思いやる姿に思えた。

「ねえ。本当に赤い糸の方向を言っているのか?」 

 鏡が問いかけた。

「そうよ。なら、先に東に行きましょう。空さんの連れ合いを先に探しましょう」

「済まない」

 空は、恥ずかしそうに答えた。

「いいのよ」

 輝も、笑みを浮かべながら楽しそうに答えを返した。

「二人が赤い糸が繋がっていたら旅をするまでないのにね」

 静が、問い掛けた。だが、もし、静が赤い糸が見えていたら、二人の糸は、常に、相手の糸の方向に向いているのが分かっただろう。

「俺も、何処にあるか分からない。生まれた里を探すから、東でも北でもいいよ」

 鏡が、いい加減に答えた。

 天猫も、会話の流れに入って来た。自分の旅の目的を忘れられている。そう感じたのだろう。そして、答えを待つかのように、四人の男女に視線を交互に向けていた。

「天ちゃん。大丈夫よ。忘れて無いから、もし、二人の相手が見付かったとしても、私も鏡も旅が好きでしているから、天ちゃんの里探しはするからね」

「そうだぞ。天。安心しろ。必ず、父さんと母さんと仲間に会わせてやるからなぁ」

 時の流れは残酷な事をしたのだろうか、全ての事を忘れていた。そして、人生の目的も全てが変わってしまったのだ。それは、神の考えなのだろうか、だが、四人の男女と子猫の楽しい会話や表情を見ると、全てを忘れた方が良かったと思えるだろう。そして、新たな旅の目的は最適と思えた。それは、新たなる旅の始まりであり。全ての事柄の始まりでもあった。

探偵見習いと化け猫」各章・・・・・・・・・・。 」